君との想い出が風に乗って消えても(長編)



「優くんと一言でもお話ができればいい……それ以外は何も望まない……そう思っていたの」


 ……話が……読めない……。


「……わたし……優くんと学校で初めて会う前から……優くんのこと……知ってたの……」


 ……え……⁉ 僕のことを知っていた……?

 いつ、どこで……?


「……あの歌……」


 ……あの歌……?


「わたしが転校してきた日の放課後、誰もいない教室で歌っていたあの歌……」


 ……あの歌が……?


「わたしが歌っていたら優くんがちょうど教室の廊下にいて……」


 うん、僕が教室に戻ろうとしたら途中から聴こえてきたあの歌……。


「……でもね……実はあのとき……本当は……偶然じゃなかったの……」


 ……え……⁉

 偶然じゃなかった……?


「優くんが、図鑑を返しに図書室に行ったのは知っていたの。だから待っていたの」


 ……待っていた……?


「優くんが図書室から戻って来るのを待っていたの」


 ……加恋ちゃん……。


「優くんとお話がしたかったから。優くんとお友達になりたかったから」


 ……加恋ちゃん……。


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