君との想い出が風に乗って消えても(長編)
……ごめんね……一輪の花さんにこんなことを訊いても困ってしまうよね……。
僕は何かが引っ掛かり続けていたけど、無理に気持ちを切り替えた。
そして……。
「一輪の花さん……今日も歌わせてね……」
僕は、そう言って毎年、一輪の花が咲いたときに歌っている歌を歌った。
曲名も知らない。
でも美しくて少しだけ切なさも感じる歌……。
僕は心を込めてその歌を歌う……。
僕の歌声が秘密の場所全体に響き渡る。
そして僕の歌声が春のやさしい風と共にやさしく流れる。
その僕の歌声に、一輪の花やたくさんの草花たちが一緒に合わせてくれているように見える。
今年もこうして一輪の花やたくさんの草花たちに僕の歌を聴いてもらっている。
……ただ……。
やっぱり今年は違う……。
昨年までは歌を歌わせてもらっているとき、僕はとても幸せな気持ちになった。