君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 20年後……。



 4月中旬、僕は今年も一輪の花に会いにあの場所に行く。


 今年も妻と小学一年生の娘と幼稚園の年中の息子と一緒に。



 あの場所に行くまでの道のり。


 今年も春の穏やかでやさしい風と香りに包まれながら、僕と妻と娘と息子はゆっくりと歩いている。


 そして……。





「……着いた……」


 美しい秘密の場所……。


 僕たち家族はその中に入った。


「こんにちは」


 僕が挨拶をすると、いつものように美しい草花たちが迎えてくれるようにやさしく揺れていた。


 そして……。


「今年もきれいに咲いてくれてありがとう」


 一輪の花も……。



「パパ、今年もきれいだね」


 娘も笑顔で一輪の花を見ていた。


 そんな娘の姿が微笑ましい。


「こんにちは」


 娘も一輪の花やたくさんの草花たちに挨拶をした。


 そんな娘の挨拶に答えるかのように、一輪の花やたくさんの草花たちがやさしく揺れていた。


< 254 / 261 >

この作品をシェア

pagetop