君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 * * *



「さっ、今日は帰ろうか」


 ある程度の時間を過ごした後、僕はそう言った。


「えー、まだいたい」


 まだこの場所にいたいと言う、娘と息子。


 僕は、そんな娘と息子が愛おしい。


「また来るときの楽しみにとっておこう」


 僕がそう言うと……。


「……うん……」


 娘と息子は頷いた。


「じゃあ、またね」


 僕がそう言うと娘も……。


「じゃあ、またね」


「じゃあ、またね」


 娘の後に息子もそう言った。


 妻も「じゃあ、またね」と言って、僕たち家族はこの場所を出ようと歩き出した。





『優くん……』





 ……え……?


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