君との想い出が風に乗って消えても(長編)
今……確かに『優くん』と聞こえた……。
……あのとき……。
あのとき……20年前と同じだ……。
僕は慌てて振り向いた。
だけどやっぱりそこには一輪の花やたくさんの草花たちが存在するだけ。
……今のも……幻聴……?
「どうしたの?」
……‼
僕は妻の呼びかけで我に返った。
「……う……ううん、何でもない」
僕は心のどこかで引っかかりながらも妻にそう言った。
「じゃあ、またね」
僕はもう一度、一輪の花やたくさんの草花たちにそう言った。
そして妻や娘や息子と一緒に歩き出した。