君との想い出が風に乗って消えても(長編)
「『加恋』って呼んで……」
……え……?
「……え……でも……」
「どうしたの?」
「……男子……たちが……」
「男子たちが……?」
花咲さんは大きな目をパチリと開けながら僕の方を見ていた。
そんな純粋過ぎるくらいの眼差しで僕のことを見つめている花咲さん。
そんな花咲さんに……言いづらい……。
花咲さんのことを下の名前で呼んだら他の男子たちに何を言われてしまうか……なんてそんなこと花咲さんに……言いづらい……。
……でも……。
「……下の名前で呼んだら……他の男子たちに……」
僕は勇気を出して言おうと思ったのだけど、『他の男子たちに……』の続きが言うことができない。
僕はそれ以上、言葉が出てこなくなって、そのまま下を向いてしまった。
「草野くん……?」
不思議そうな感じで僕の名前を呼ぶ花咲さん。
「…………」
僕は無言で下を向いたまま。
どうしよう……このままでは、せっかく仲良くしてくれようとしている花咲さんに申し訳ない……。