君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 そんな雰囲気を感じるからか、花咲さんが歩くだけで男子たちは、ざわざわしていた。


 そして花咲さんが僕の隣の席に着いた。


 僕は花咲さんの方を見た。


 すると花咲さんも僕の方を見た。


 純粋過ぎるくらいの花咲さんのきれいな瞳に見つめられた僕は身体が一瞬、時が止まったかのように動かなくなってしまった。

 まるで魔法にかけられてしまったかのように……。


 僕の固まった様子を見ている、花咲さん。


 花咲さんに見つめられ続けて僕は、ますます固まってしまう。


 そんな僕のことを心配している様子の花咲さん。


 僕のことを気にしながら花咲さんは椅子の背もたれに手を乗せた。

 繊細そうな細くてきれいな指。


 その指で椅子の背もたれを後ろに引いた。


 そして花咲さんは椅子に座り、もう一度、僕の方を見た。


 僕は、さっきよりも胸の鼓動が激しくなっていることがはっきりわかった。

 そして頬も熱くなっている。


 花咲さんが僕の隣の席に座ったのだから僕は、挨拶くらいはしないといけないと思うのだけど、その気持ちとは正反対に全く声が出ない。


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