君との想い出が風に乗って消えても(長編)
このままでは花咲さんに挨拶もできないのかと思われてしまう……そう思ったそのとき……。
「草野くん」
花咲さんが僕の名前を呼んだ。
僕は、まだ声が出なかった。
「わからないことがあったら教えてね」
そう言ってやさしく微笑む、花咲さん。
「……うん……」
僕は、ようやく声を出すことができた。
「僕は草野優、よろしくね」
やっと挨拶もすることができた。
「こちらこそよろしくね」
花咲さんの笑顔。
それは天使のような笑顔。
僕は、その天使のような笑顔の花咲さんの笑顔に見とれていた。
* * *
1時間目が終わった。
「草野、今日、日直だよな。悪いけど、そのノートを職員室まで運んでくれるか」
「はい」
僕は先生の机の上に置いてある一クラス分のノートを手に取った。
そして僕は一クラス分のノートを持って教室を出た。
今、僕はノートの束を職員室まで運んでいる。
すると。
あれ?
何か聞こえる。
この音は……。