君との想い出が風に乗って消えても(長編)





『来年の今頃は、ここにはいない』





 あの言葉を聞いたとき、僕はものすごくショックを受けた。


 加恋ちゃんのあの言葉を聞いたあの日から僕は今まで以上に一日一日を大切に過ごしている。


 加恋ちゃんとの時間を大切に大切に……。





「そのときに優くん、私に『来年、秘密の場所に一緒に一輪の花を見に行こう』って言ってくれたでしょ」


「うん」


 あ……そっちの方ね……。

 もちろんそのことを話に出してくれるのは大歓迎。

 だけど……。

 僕は加恋ちゃんのことで思い出すといったら、すぐに『来年の今頃は、ここにはいない』ということが頭に浮かんでしまう……。

 そのことは浮かばないようにしなければいけないのに……。


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