君との想い出が風に乗って消えても(長編)



「……優くん……」


「加恋ちゃん……」


「……優くん……それは……」


 加恋ちゃんは、そのまま下を向いてしまった。


 僕はそんな加恋ちゃんに……。


「……加恋ちゃん……僕のこと……嫌い……?」


 僕は訊かずにはいられなかった。

 加恋ちゃんが僕のことをどう思っているのかを……。


「違う‼ 違うの‼」


 加恋ちゃんは下を向いていた顔を上に向けた。


「わたしは……わたしも……優くんのことが……」


「……加恋ちゃん……」


「わたしも優くんのことが好き……」


「加恋ちゃん……」


「……でも……」


「……でも……?」


「……わたしは……人を好きになっては……いけないの……」


「……え……?」


「……だから……」


「『だから』……なに?」


「……え……」


「僕は加恋ちゃんのことが好き。加恋ちゃんも僕のことが……それで充分じゃない」


「……優くん……」


「もし来年の今頃、加恋ちゃんがここにいなくても、今の時代はオンラインで繋がることもできるんだよ」


 そうだよ、今の時代はそういう方法がある。


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