異世界和カフェ『玉響』。本日、開店いたします!
第一章 突然の異世界
予期しない出来事は、いいことも悪いことも、いつだって私を待ってはくれない。
それは、ある休日の午後のことだった。
私――類家亜梨子は自宅兼店舗である和菓子屋で、父に見守られながらお菓子作りに励んでいた。
とはいっても店は現在休業中。
創業五十年となる、和菓子店『玉響』の現店主であり、唯一の職人でもある父が先週、手を痛めてしまい、完治するまでお休みすることになったからだ。
昔は店内飲食も行っていたようで、古びた店内は意外と広い。
その頃の名残か、店の奥には使われていないテーブルや椅子が片付けられている。
定期的に掃除しているので埃などは被っていないが、使わないのならいい加減捨てればいいのにとも思ってしまう。
いつもは和菓子が並んでいるガラスのショーケースは、今は空っぽ。
その隣には会計用のレジがあり、店のマスコット的存在である足の短い黒猫のぬいぐるみが飾ってある。
鍵尻尾とオッドアイが特徴のドヤ顔をした猫のぬいぐるみは、私が気づいた時にはすでにそこにあった。
置いたのは父らしいが、タグなどはなく、どこのメーカーのものかも分からない。
三十センチほどのぬいぐるみで、かなり存在感がある。
名前はリーフ。
丸いシルエットが女性客に大人気である。
それは、ある休日の午後のことだった。
私――類家亜梨子は自宅兼店舗である和菓子屋で、父に見守られながらお菓子作りに励んでいた。
とはいっても店は現在休業中。
創業五十年となる、和菓子店『玉響』の現店主であり、唯一の職人でもある父が先週、手を痛めてしまい、完治するまでお休みすることになったからだ。
昔は店内飲食も行っていたようで、古びた店内は意外と広い。
その頃の名残か、店の奥には使われていないテーブルや椅子が片付けられている。
定期的に掃除しているので埃などは被っていないが、使わないのならいい加減捨てればいいのにとも思ってしまう。
いつもは和菓子が並んでいるガラスのショーケースは、今は空っぽ。
その隣には会計用のレジがあり、店のマスコット的存在である足の短い黒猫のぬいぐるみが飾ってある。
鍵尻尾とオッドアイが特徴のドヤ顔をした猫のぬいぐるみは、私が気づいた時にはすでにそこにあった。
置いたのは父らしいが、タグなどはなく、どこのメーカーのものかも分からない。
三十センチほどのぬいぐるみで、かなり存在感がある。
名前はリーフ。
丸いシルエットが女性客に大人気である。
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