激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
それを宝生さんに見せるの?
おそらくオーダーのスリーピースをビシッと着こなした彼の前にそれで出て行くのは気が引ける。
とはいえ、どれだけ焦っても、有名ブランドの洋服が突然目の前に現れるわけじゃない。仕方がない。
覚悟を決めた私は手早く着替えを済ませて、コート片手に宝生さんのところに戻った。
「家までお送りします」
なにかつっこまれるかもしれないと身構えていたのに、彼の表情は変わらない。
いたたまれなくなって、店を出たところで頭を下げた。
「ごめんなさい。こんなラフな洋服で来てしまって、また宝生さんに恥をかかせてしまったのでは?」
正直にぶちまけると、彼は目を丸くしたあとクスクス笑い始めた。
「恥なんてかいてませんよ? 十分素敵です。それに、私は洋服を好きになるわけではありません」
まったく気にもとめていない様子を見て、ようやくホッとした。