激愛～一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい～
もうひとりの宝生さんも何度か見かけたことがあるが、おそらくこの会社の人ではない。
クライアントなのだろうか。

社長室に出入りする人の中では圧倒的に若い。


私は邪魔にならないように、さらに端によけて作業を続けていた。

しかし、秘書が話に夢中になっていて、このままではこれから生けるために置いてある花を踏まれる！と焦って手を出した瞬間。


「危ないっ」


宝生さんが叫んだ。

すると、気づいてよけようとした秘書が運悪く水切りに使っていたバケツのほうに足を出してしまい、足に水がかかってしまった。
ズボンがびしょ濡れだ。


「なんなんだね、君は！」


すさまじい剣幕で叱られて、とにかく頭を下げる。


「申し訳ありません」
「謝って済むと思っているのか？　どうしてくれるんだ！」


といっても、ぶつかってきたのは彼のほうだ。


「本当に、すみません」


派手に濡れてしまったからか、彼の怒りは収まらない。
私はポケットからハンカチを取り出して、濡れたズボンを拭こうとした。
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