激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
話しかけるとよく育つと聞いたことがあるからだ。

それに、ひどいことをされるとおびえるという話も。


板垣さんに踏まれた花は、無残にも花びらが散ってしまったものもあれば、茎がつぶれたものもある。

このまま飾るわけにはいかず、残った分だけでアレンジを済ませた。


悲しい気分に陥りながらワゴンに引き上げていくと、車にもたれかかっている男性がいる。
宝生さんだ。

彼は私が近づいていくと、笑顔になった。


「終わりました?」
「はい。先ほどは申し訳ありませんでした」


もう一度腰を折る。


「謝るのは私のほうです。この会社はクライアントで……。ビシッと注意できなくて申し訳ない」

「とんでもないです。助かりました」


それは当然だし、十分板垣さんにくぎを刺してくれたと思う。


「かっこよかったですよ」
「えっ?」
「『あなたに踏まれるためじゃない』って」


それを指摘されると、穴があったら入りたい気分だ。


「あはは」
「その花は、もうダメですね」


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