激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
「そんなことはありません。着物で来てくださるとは思ってもいなかったので、とてもうれしいです。それにこれ……」


彼は髪に挿してある椿の花を目ざとく見つけた。


「生花です。一応花屋なので」


そう伝えると、彼は顔を近づけてくる。
な、なに……?


「いい香りだ」


身構えてカチカチになっていたら、彼は椿の花の香りを楽しんだだけだった。

ひとりでなにを勘違いしているのだろう。
恥ずかしすぎる。


「とにかく、座りましょうか」
「は、はい」


事態がよく呑み込めていない私とは対照的に落ち着いた様子の彼は、私を席に誘導してから対面に腰を下ろした。

すぐに先ほどとは別の仲居さんがやってきて日本酒や料理を並べだす。

こんな格式高い料亭でのマナーがわからない私は、器を置かれるたびに頭を下げ続けていた。
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