激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
スマホをポケットにしまった彼の口から、うれしい言葉を聞いて勝手に頬が緩んでくる。

忙しくて連絡できなかったのか。


「今、帰ろうと思っていたところでした」
「そう。運がいいな、俺」


お見合いのときはずっと敬語だった彼の言葉遣いが変わっている。
でも、こちらのほうが話しやすい。


「スマホは無事?」

「はい。画面も割れていませんでした。手がかじかんでうまく握れなかったんです。ごめんな――」


それ以上続かなかったのは、彼が私の右手を握ったからだ。


「本当だ。こんなに冷たい。こっちは?」


目を丸くする宝生さんはさらに私の左手も握り、大きな手のひらで包み込んだ。

「いつもの、ことですから」と言いつつ目が泳ぐ。
彼にしてみれば冷えた手を温めようとしているだけだろうけど、私は照れくさくてたまらないのだ。


「いつも?」

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