氷の美女と冷血王子
「鈴木さーん」

トイレの中は個室が5カ所。
幸い利用客はいなかったため、私は1カ所ずつ確認していった。

コンコン。

ガチャッ。

ノックして4カ所目で、鍵が開いた。

「鈴木さん?」

ゆっくりと開けられたドア飲むこうから、女の子が顔を出した。

「・・・はい」

「大丈夫?」
思わずそう聞いてしまった。

だって、涙でグチャグチャな顔。
真っ赤な目と、腫れてしまったまぶた。
相当泣いた後みたいね。

「すみません、大丈夫です」
まだ涙声で答える鈴木さん。

「髙田君が心配しているけれど、」
どう見ても出て行ける感じではない。

「会いたくないなら帰ってもらおうか?」

泣きはらした顔は、きっと男の子に見られたくないだろう。

「すみません」
と、鈴木さんが頷いた。
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