氷の美女と冷血王子
「鈴木ー」

何度か髙田君が呼び続けたところで、

「もう、いいから」

鈴木さんの方がトイレから出てきた。

顔は洗ったようですっかり化粧は落ち、目も充血したままだけれど、意外にすっきりした顔をしている。

「青井さん、お騒がせしてすみません」
ペコリと頭を下げる鈴木さん。

「いいえ。何のお力にもなれずごめんなさい」

結局2人で解決したんだから。

「いえ、ありがとうございました。ところで、青井さんは今お時間ありますか?」
突然髙田君に聞かれ、
「え、まあ」
まさか、「会社を辞めたので暇です」と言うわけにはいかず、曖昧に答えた。

「じゃあ、この後飲みに行くので付き合ってください」
「いや、でも」
「お願いします。鈴木と2人だとまた泣かれても困るので」
「そんな・・・」

「お願いします、一緒に行きましょう?」
鈴木さんにも言われ、断れなくなった。

「駅前の居酒屋でいいですか?」
「ええ」
どうやら私の同行は決定したらしい。

「ほら鈴木、行くぞ」
くるりと、背を向けて歩き出す髙田君。

「えー、待って」
慌てて後を追う鈴木さんがかわいいなと思いながら、私もついて行った。
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