氷の美女と冷血王子
「「「カンパーイ」」」
それぞれジョッキを持ち、ビールで乾杯。

こんな風に居酒屋で飲むのは何年ぶりだろう。
就職した当時、何度か飲み会があって以来だと思う。

「青井さん何か食べたいものとか、好き嫌いとかありますか?」
髙田君がメニュー片手に聞いてくれる。

「いいえ、何でも美味しくいただきます」

どうやら髙田君がまとめて注文をしてくれるつもりみたい。


「じゃあ、サラダのドレッシングは和風で。チーズは嫌いな奴がいるので、串揚げの盛り合わせもチーズは抜いてください」
「はい」

店員さんを呼びサラダと揚げ物と、枝豆を注文してくれた。

「とりあえず注文したので、後は各自で追加してください」

注文を終えると、髙田君はやっとビールに口を付ける。

「青井さんってこういう店が似合いませんよね?」
さっきまで泣きはらしていた鈴木さんが、ビールの3分の1ほどを空けてから私を見た。

「そう?好きよ」

これは嘘ではない。
縁がなくて来るチャンスに恵まれなかったのは事実だけれど、高級な店よりもこういう大衆的な店の方が好き。

「そうですか?青井さんって、高級フレンチの店で、高いワインとか飲んでいそうなのに」
「そんなことないわよ」

鈴木さんの頭の中で、すごいイメージができあがっているみたい。

「鈴木、失礼だぞ」
チラッと鈴木さんを見ながら、髙田君が渋い顔をした。

「そお?」
悪びれる様子もなく、ビールに口を付ける鈴木さん。

「こら鈴木、飲んでばかりいないでちゃんと食べろよ」
髙田くんに指摘され、
「うん」
鈴木さんは素直に頷いていた。
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