氷の美女と冷血王子
「いきなり病院から電話があって、心配したんだぞ」
「すまない」

救急車で運ばれた病院で、仕事関係以外での友人が少ない俺の携帯履歴から徹に連絡があったらしい。
まあ、家に連絡をされなかっただけ良かったと思うしかない。
母さんの耳に入れば大騒ぎになっていたことだろうから。

「仕事で疲れているってわかっているのに、何で酒なんて飲むんだよ。倒れることは想像できただろうが」
お前らしくないぞと、徹が眉をひそめる。

「悪い」

今は何を言われてもしかたない。


「点滴が終わりましたから、抜針しますね。どこか具合の悪い所はありませんか?」
看護師さんに聞かれ、
「ええ、大丈夫です」
多少の頭痛は無視して答えた。

「最後に診察があって、問題がないようなら帰ってもいいですからね」
「はい」

ほっ。
なんとか入院にはならずにすんだ。

それにしても、俺は一体どうしたんだ。
いつもならこんな無様なことにはならないのに。本当に情けない。

元々、俺は酒が強いわけでない。
だからこそ、限界を意識しながら酔っ払うことなんてないようにセーブしてきた。
こんな仕事をしていれば酒席だって多いし、どうしても飲まないといけない時もあるが、それなりに立ち振る舞ってきたんだ。
それが、今日に限ってこのざまだ。
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