氷の美女と冷血王子
目の前に現れたのは、今夜俺が乗っていた車。
確かママの店近くに駐めたままにしていたはずだが、なぜここに?

訳がわからないまま見つめていると、車のドアが勢いよく開いた。

「徹、一体どういうことなのっ。孝太郎が倒れたとか、車で病院に来いとか、意味がわからないんだけれど。それに、えっ?」

車から降り徹に抗議していた麗子が、俺を見つけて黙った。
俺も言葉が見つからず、見つめ返した。

「その通りの意味だよ。お前に会いたくて無理して仕事をした孝太郎が倒れたから、迎えいに来い。そう言ったんだ」
当然だろうとでも言いたそうに、徹は強気な態度を見せる。

「徹」「お前」
俺と麗子の声が重なった。

「とにかく、俺は帰るから後は2人で話してくれ。俺は明日も仕事なんだ」
そう言うと、徹は背を向けて歩いて行ってしまった。

こうなると、残された俺と麗子は居心地が悪い。
お互いがなかなか言葉を発せないまま、時間が過ぎた。
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