氷の美女と冷血王子
調べれば調べるだけ河野副社長の息のかかった企業の数は多く、その関係者も増えていった。
これでは全容をとらえるのに時間がかかりそうだ。
1つでも良いから確定的な証拠があれば、河野副社長の悪事を表に出すことができるし、そうなれば芋ずる式に色々なことも見えてくるはず。
もっと手っ取り早く確たる証拠が欲しいんだけど・・・

その時、私はあることを思い出した。
河野副社長の専属秘書である三島さんに、『オペラのチケットが手に入ったんです。良かったら行きませんか?』って誘われていた。
『また機会があれば』なんて適当に答えたけれど、確か・・・今日のはず。
彼なら河野副社長の行動にも詳しいだろうし、何か情報が聞けるかもしれない。

私は早速三島さんに連絡を取った。

私と違い仕事をしている人に、平日の昼間に連絡しても無駄かなって思うけれど、今はやれるだけのことをするしかない。
たとえ今日が無理でも、近いうちに会えるチャンスができれば、河野副社長の情報を手に入れられる。
夢中になると周りが見えなくなる傾向のある私は、この時自分がどんなに危険な行動に出ようとしているかまで考えが及ばなかった。
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