氷の美女と冷血王子
メールをしてから1時間ほどで三島さんから返事が来た。

内容は『是非、行きましょう』と言うもの。
私も『楽しみにしています』と返信を打って、夕方会う約束をした。


午後6時。
指定された劇場の前で待ち合わせ。

今夜も帰ってくると言っていた孝太郎には外出するとだけ伝えて、詳しいことは言えなかった。
どう言っても反対されそうだし、わざわざ嘘をつくのも気が引けた。
幸い、朝出かけるときにスペアキーを渡してあるから、部屋には入れるはず。


「青井さん、お待たせしました」
スーツ姿でかけてくる三島さん。

「いえ、私こそ急にすみません」

私にしては珍しく、ふんわりしたワンピースに靴は5センチのヒール、髪もおろして緩やかに巻いてみた。
自分としてはかなり気合いを入れたつもりだ。

「いや、あの、なんだか・・・」
目の前まで来て立ち止まった三島さんの、視線が泳いでいる。

ん?
「どうかしましたか?」

「いや、あの・・・すごく綺麗です」

「ああ、ありがとうございます」
作戦と分かっていてもなんだか照れくさい。

「じゃあ、行きましょうか?」
「はい」

一歩前を歩く三島さんに続き私は劇場へと向かった。
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