守られて、愛されて。
はじまり
終業時間まであと一時間。私は、事務作業に追われていた。明日、期日なのに……なんでこんなことに。
─︎─︎─︎私の名前は、上条 花奈(かみじょう はな)。
ここ、TAKEフードで働くOLである。そして、苗字を見れば分かると思うが、上条ホテルグループの社長令嬢だ。
「上条さん、これお願いできる? 」
「あ、はい……やります」
こんなギリギリに、頼むなんて性格悪い……まぁ、仕方ないとも思う。私だって断ることができないから。
それに……。
「上条さんはいいよね〜ご令嬢様なんだから、将来は約束されてるし、きっと婚約者とかいるよ〜」
うん、これ毎日聴いてる。耳が痛いほど。
彼女たちの噂通り、私には婚約者がいるらしい。
しかもその婚約者、このTAKEフードのお偉いさんらしいのだ。
確か、名前は…… ─︎─︎─︎─︎─︎─︎武智 郁萌(たけち いくも)さん。この会社の次期副社長だと聞いた。
そして、本日……その人とお見合いをするらしい。そのお見合いは、19時からある。だからそれに間に合うようにしなくちゃいけない。
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