守られて、愛されて。


【専務室】と書かれたドアをノックし、「上条です」と言うとドアが突然開いた。

「うわぁっ!? 」

郁萌さんらしき人に手を引っ張られ部屋の中に入ると、ギュッと抱きしめられた。

「花奈ちゃん」

「あ、あの……い、郁萌さん……」

これはどういう状況……なのか。どうしたらいいのかわからない。

「一ヶ月」

「え? 」

「俺、今から花奈ちゃんに好きになってもらうから」

好き? 何を言ってるの……?

「え、と……突然なんで、」

「愛のない結婚が嫌なんだよね? だったら、君に好きになってもらうしかないでしょ?」

「そう、なんですか……? 」

「だから、好きにさせるから……覚悟して」

郁萌さんは、私のことどうおもってるのだろうか……?

「郁萌さんは……私のこと、どう思って─︎─︎─︎」

「俺は好きだよ、花奈ちゃんのこと……愛はあるね」

そんなことをサラッと言うなんて……女慣れしてるよね。

「花奈ちゃん、俺女慣れとかしてないよ? ずっと仕事が恋人だったし」

「え……」

「一応言うけど、告白したの初めてだからね?」

そう言ってまたぎゅっと抱きしめて、郁萌さんは「充電完了〜」と言うと私に笑いかけた。




< 16 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop