僕からの溺愛特等席
大学時代、ファンクラブが設立されていたという噂まであったのだから間違いない。
そうでなければ、女の子がドキドキするような、そんな言葉は出てこないと思うのだ。
つまり、なんというか………凄く慣れてる。
彼の部屋に入るのは二回目になるが、前に来た時には気づかなかった本棚。
そこにはずらりと小説が並んでいた。
中には私が持っている本もあったがほとんどは私には到底理解が出来ない専門書や資料などが書棚を占めており
何故か広辞苑や類語辞典、他にもいくつか辞典が揃えられていた。
思っていたよりもハイレベルな読書家なのかもしれない。
「気になる本があれば、貸しますよ? なんなら、ここで存分に僕が読み聞かせをして差し上げますよ?」
「もう、年上をからかわないの」
「僕の本心なんですけど」
「そういえば」
「なんですか?」こてん、と首を傾ける糸くん。
「もしかして、糸くん本を書いてたりする?」
辞典の数々、そして文章に関する専門書。それらから、もしかしてと推測したわけだ。