僕からの溺愛特等席
「俺、三春さんが好きだから。お前よりも俺にしなって言ったんだ」
「なんで……」
絶句するように震え、強く拳を握る糸くん。優美さんも考え込むみたいに口元に手をやり、俯いている。
「そんなの俺だって聞きたいよ。でも、好きなんだ」
糸くんの横顔を盗み見る。
悔しそうに唇を歪め、彼はゆっくり私の方を向いた。
嫉妬で黒く染まりドロっとした感情が流れ込んでくるみたいだった。
そっと肩に置かれた糸くんの手にぐっと力が込められる。
「……返事はしたんですか」
胸が詰まる思いで、声なんてかすれて出なかった。ただ首を振って否定した。
「……あの、すみません」
重苦しい空気のなか、小さく声をあげたのは優美さんだった。
「もう、行かなくちゃ。……新幹線に乗遅れちゃう。旭くん送ってくれる?」
「あ、ああ」
その一言で優美さんと旭さんは店を後にした。しばらくこっちにいるつもりだった彼女も、大学のある向こうに戻るらしい。
店を出る直前に旭さんがそう言っていた。それに、もう一言──。