僕からの溺愛特等席
過保護といえばもうひとつあった。
仕事帰りだ。
週に2日の定休日には必ず車で迎えに来てくれて、相変わらず私側のドアを開けてから自分も乗り込むという紳士っぷりだ。
彼のそういう作法みたいなのはどこで身につけたのやら。
「お疲れ様です、三春さん」
とにかく、全てのことを一旦忘れてしまって、この言葉で全て疲れが一気に吹っ飛んでしまうのもまた真実だ。
「いつもありがとう糸くん」
「いえ、僕が心配でたまらないので」
玄関口で待っていてくれた糸くんは相好を崩し私を迎えてくれた。
「三春ちゃん今あがり?」
後ろから声をかけてきたのは同僚の華ちゃんだった。
コンビニの袋を下げた彼女はこれから夜勤のようだ。そういえば明日は私が夜勤だ。
「あれ、もしかしてそちらの方って……喫茶店の彼氏?」
にやにやと私に目配せをして横腹をつついてくる。
「そうです」
答えたのは糸くんだった。そして私の肩に手が回されぐっと引き寄せられた。
「僕の彼女に悪い虫はついてないでしょうか」
と、いきなり華ちゃんに言うので、私はとても驚いた。