僕からの溺愛特等席
愛想が凄く良い訳では無いが、接客に不向きという訳でもない。
彼、独特の空気感が、寧ろこの喫茶店に溶け込むように馴染んでいる。
何より、話してみるとよく笑う人だと私は知っていた。
「彼の良さは、愛想とかじゃないと思いますよ」
当麻さんは、眉を動かす。反論されるとは思っていなかったみたいだ。
私だってこんなことを言うなんて思ってなかった。
心の声が、ポロッと外に出たような言い方だったに違いない。
「じゃあ、こいつ良さって?」
糸くんも目だけを寄越した。
「落ち着きと、そのギャップでしょう」
引っ込みのつかなくなった私は、弾んだ声で言う。
糸くんが顔を赤くしていた。私が何を言い出すのか冷や冷やしているのだろうか、赤い顔をしながら、複雑そうに口を歪める。