僕からの溺愛特等席
しりあいの兄は優しい?
次の休みに、相馬さんに貰ったクーポン券を持って、美容院に訪れた。
外壁は大雑把に塗られた漆喰が、洒落ている。大きな窓ガラスがついたお店だ。
「待ってましたよ、三春さーん。今日はカットで宜しいですか?」
私の鎖骨あたりまで伸びた髪に、すーっと指を通しながら、鏡越しに相馬さんは聞いてくる。
「肩くらいまで、切っちゃって下さい」
「了解です。腕がなりますねえ」
私の希望通りに、シャンプーを済ませ、相馬さんがチョキチョキと手際よく切ってくれる。
美容院ってやけに緊張するというか、私がシャイなだけかもしれないけれど、
肩が詰まって早く帰りたいなあ、なんて思うこともちょくちょくある。
会話が止まると焦るのだ。
でも、やはり知り合いの美容師さんってだけに、ここでは会話にも困らずリラックスしていた。
「何か最近、劇的な出来事ってないですか?」
ふっと浮き上がるように相馬さんから質問を投げかけられる。