僕からの溺愛特等席


お見舞いに来る時の相馬さんは敬語とタメ口を交ぜて使っているのが印象的だけど、


美容師さんの時の相馬さんは徹底して敬語で話しかけてくれる。



「難しいこと言いますね」

「なんでもいいですよ」

「うーん」

なにかあったかなあ、と考える。


劇的かあ。そんな、目まぐるしい生活をおくってみたいな、と憧れる。


なんにも浮かんでこないから、


「………ところで、なんでそんなことを?」


思い立って聞いてみる。



「いやあ………最近は専ら仕事ばっかりで、日付感覚も狂ってくるくらいですから。髪のこと以外の情報を、と思いまして」



 鏡越しに照れたようにはにかんだ相馬さん。


確かにお客さんも入れ替わりやってくるので、休む暇も無さそうだ。
他の美容師さんもせかせかと動き回っている。


そんな忙しい合間を縫って、お見舞いに来ていたんだ。道理で佳代さんが心配するわけだ。



 そんなことを考えつつ、いい話は思いつきそうになかったから、代わりに相談することにした。



相馬さんなら、うんうんと聞いてくれそうだし。



「ああ、そういえば。ありました。劇的では無いですけどちょっとした、悩みの種みたいなのが………」



「ほお、それはどんな?」


「多分、面白くはないと思いますけど」


「ぜひ聞かせて欲しいですね」


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