僕からの溺愛特等席
「う、うん」
「もしかしてですけど……野間さんが最近店に来てくれないのってそれと関係してます?」
「関係してると言えば、関係してる………」
悪いことをしていたわけでもないし、むしろ気を使った結果だったというのに糸くんの迫力に圧倒されて、すっと目を逸らした。
「だって、邪魔しちゃ悪いし、私が店に行くのを控えるだけで糸くんの恋が実るならと、思って」
はあーっと大きなため息をついて私をジロっと見る糸くんは心底不満げだ。
「あのね、野間さん。僕、すごく腹立たしいんですけど、怒ってもいいですか」
「え!?」
私の勘違いは、怒りを買うほどのものだったのか。というか……もう怒ってるように見える。
「その『嘘』の情報。野間さんにだけは信じて欲しくなかったです」
糸くんは、嘘の部分を大袈裟に言って、旭さんから吹き込まれたことは全て嘘であると滔々と話した。
「いいですか、野間さん。これまで通りに店に来てください。じゃないと、もう僕、店閉めちゃいますよ。寂しくて」
「そ、そんな大事になっちゃうの」
流石に冗談だと思って、軽くそう答えた。
しかし、糸くんの眉間のシワは深くなるばかりで、
それどころか私の方に向き直って覗き込んでくる。