僕からの溺愛特等席
思い返せば、そう取れるような行動も数えられないほど心当たりがあった。
今、はっきり言われてやっと気づけた。
「それで、やっとって時に、兄さんに横取りされるのはごめんだ」
ふと、旭さんから言われた「糸より、俺にしときな」という言葉が蘇る。
「兄さんに気に入られるなんて、どんな風に誘ったんですか」
「誘ったって、そんな、何も……」
糸くん妖艶な表情を浮かべ、私の髪に指を通す。
「そんな固まっちゃって、なんですか。後輩の僕が怖くなっちゃいました? それとも僕からの好意が嬉しい?」
「か、固まってなんか……。私をからかって遊んでるなら、やめて……」
こんな時に年上の威厳なんてあったもんじゃないけど、気が動転して、そんな風にいさめることしか出来なかった。
冗談にしては悪趣味すぎるし、正気なら正気で急変した糸くんは、ちょっと怖い。