愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「蕪木っ。」

 就業時刻を過ぎ、帰り支度をしていると、後ろからの声に気づき振り返った。

「よっ!」

「あ、須崎(すざき)くん。何してるの?」

 私の後ろのデスクに寄りかかり、手をあげてニッと笑う彼。

 営業一課でバリバリの営業マンをしている、同期――須崎 律(すざき りつ)。入社4年で同期はどんどん減っていき、残ったのは五人。彼は、そのうちの貴重な一人だ。

「もう仕事終わった?同期会誘いに来たんだけど。」

 営業の彼が、わざわざ階も違う広報課に何の用かと思っていると、そういうことだった。


「今から??それならお昼にLINE送ってくれればいいのに。」

 LINEでは、私たち同期のグループができていて、いつもならそこでお誘いがくる。なのに、今日は直接来たから珍しいなと思っていた。


「いーから!どうせ予定なんてないだろ?」

 半ば強引に連行され、言われるがままエレベーターに乗り込んだ。

「もー、予定あったらどうすんのさ。」

「ないない、蕪木は基本家と会社の往復。」

 携帯をいじりながら、分かったようにそう言う須崎くんの言葉に、思わずギクッとした。


「たしかに、そうだけどー.....。」

 私はふてくされたようにそう呟きながら、鞄から携帯を取り出しLINEを開いた。

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