愛を孕む~御曹司の迸る激情~
不意打ちのように言った台詞に、思わずドキッとさせられ、顔が熱くなった。藤野はたまにこういうことを言って、俺を戸惑わせる。
「詩音のこと好きなのは知ってるけど、私諦めたわけじゃないよ。」
そう言って、藤野は去り際にニコッと微笑み、髪をなびかせながら仕事に戻っていった。
俺は呆気にとられ、騒がしい心臓を落ち着かせるかのようにしゃがみ込み、深くため息をついた。
「本当、いつも直球すぎんだよ.....。」
そう呟き、頭から湯気が出そうになりながら両手で顔を覆った。
1年前、藤野は俺が蕪木のことを想ってると知った上で、好きだと言ってくれた。ただ、好きでいたいと言ってくれた。
実際、高嶺の花と言われるだけの美人から告白されて、男として嬉しくないはずがない。正直、それから意識しているのも事実。でも、どうしても、俺の中では蕪木だけだった。
「須崎ー!もう出るぞー!」
遠くから上司の声が聞こえ、俺は髪をわしゃわしゃとかいた。そして気合いを入れて立ち上がると、上司の元へと足早に向かった。