愛を孕む~御曹司の迸る激情~
かたや元恋人。かたや振られた話を泣きながら話した相手。成宮さんと二人っきりでないことにはホッとしたものの、なんとなく三人でいるのは気まずかった。
「いいじゃん、須崎くんは気まずくないんだし。」
「いや、俺もなんとなく気まずいわ。だから、俺と蕪木で座ればって言ったじゃん。」
「それはなんかさー。」
成宮さんに聞こえないように、小声で言い争う私たち。後ろ向きに体をひねりながらそう話していると、そっと成宮さんに目を向けた。
すると、彼は書類に目を通しながら相変わらず仕事に没頭していて、私たちの会話なんて耳に入っていないようだった。
「俺、あそこまではできないわ。」
私は、須崎くんがボソッとそう言うのを聞き、ゆっくりと前へ向き直った。移動中くらい仕事から離れてもいいようなものなのに、やっぱりあの頃と変わらない成宮さんだった。
おもむろにイヤホンを耳に入れると、携帯の音楽をかけた。
それから大阪へ着くまで、私は一人ボーッとどこか一点を見つめながら自分の世界に入った。