愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「無事終わって良かったね。」
試飲会を終え、ホテルのチェックインをすませた私たち。いまだ会場で仕事をしている成宮さんを残して、須崎くんと2人でホテルのエレベーターに乗っていた。
「ああ。新商品の宣伝にもなったし、ひとまず安心したよ。」
ルームキーをもらうと私たちは同じフロアで、ホッとしたように言う彼の言葉を聞きながら、エレベーターを降りた。
「じゃあ、お疲れ。私こっちだから。」
そう言って手を振り、ルームキーに書かれた部屋番号をたどりながら歩き出そうとした、その時。
「あっ、蕪木!」
須崎くんに呼び止められ、私はくるっと振り返った。
「ん?なに??」
そう言うと、言いづらそうに目を逸らす須崎くんが、頭をかきながら口を開いた。
「あのさ、ご飯行かない?」
そして様子を伺うようにこちらを見てくる彼。私は、自然と笑顔になっていた。
「行く!あー、7時半でどう?1時間後。」
「お、おお!おっけい!」
須崎くんと別れて部屋に入ると、ベッドを見た途端にどっと疲れを感じた。一日立っていたせいか、足はもうパンパン。荷物を置いて、そのままベッドにダイブしていた。
私は重力に身を任せるように、ふかふかのベッドに顔を埋めると、だんだんまぶたが重くなっていき、完全に目を瞑った時にはもう夢の中だった。