愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「成宮さん、あの.....」
「俺じゃなくて、須崎と行くの?」
困惑する私の言葉を遮って、圧をかけるように言う彼。どこかいつもと様子が違っていた。
「それは、上司として言ってますか。それとも....」
私は仕方なくそう聞くと、成宮さんの温かい手がポンッと頭の上に乗った。
「いいよ、どっちでも。来てくれんなら。」
私はどうしても、断ることができなかった。
あの時、あの一回きりだと決めていたのに。二人っきりで会うのは、あのバーで最後にしようと思っていたのに。私の、意思の弱さだった。
結局、言われるがままに居酒屋へ入り、成宮さんとカウンターに並んでいた。私は自分に言い聞かせるように、心の中で何度も唱えた。
これは、上司と部下の食事。
これは、上司からの誘い。
「なあ、そんな身構えるなよ。もっと普通にさあ。」
気を張りながら食事する私の様子を見ながら、痺れを切らしたように言う彼。でも、気を緩めるわけにはいかなかった。
「私、上司からのお誘いだと思って来たんです。違うなら帰ります。」
そうしないと、成宮さんのペースに飲まれてしまいそうだったから。