愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 あのバーで話して以来、ずっと感じていた。まだ彼には、私への気持ちが残っていると。時折見せる笑顔も、私を見る目も、触れる手も、昔と変わっていなかったから。

 だけどそれが、私を過去の思い出に引き戻す原因でもあった。


 でも、私はもう祐一の婚約者。彼に対して、堂々と居られなくなることだけは嫌だった。

 とはいえ、会社で仕事がしづらくなるのも嫌で、成宮さんを拒絶することはできない。今は仕事上で関わらない日はない、直属の上司。だから、良好な関係でありたい。

 そんな理由をつけて、自分自身に言い聞かせていた。


「分かったよ。」

 すると、真剣な顔の私を見て、諦めたようにふっと笑う成宮さん。残ったビールを飲み干すと、新しいお酒を頼んだ。

 私も複雑な思いのまま、一気にビールを飲み干した。

「そういや、結婚の相手って、須崎?」

 すると、唐突に言った成宮さんの言葉に驚き、思わずむせ込んだ。

「え、なに、図星?」

 そんな私の背中をさすりながら笑って言う彼に、慌てて首を横に振った。

「違います!」

「えっ、違うの??」

 まさかそんなことを思っていたなんて知らなくて、私は呆気にとられた。もはや祐一とのことは、社内でも広まっている情報で、とっくに知っている話だと思っていたから。

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