愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「取引先?」
「はい、あの、高瀬グループの......」
高瀬 祐一だとそう言いかけた時、成宮さんがドンッと大きな音を立ててお酒のグラスを置いた。
「あー、じゃあきっと知らないわ。」
そして、冷たくそう言った。私は急な音にびっくりして、その後に言おうとした言葉が出てこなかった。
「そう、ですか。」
その場には凍りついたような空気が漂い、無表情でお酒を飲み続ける彼の横顔はとても怖かった。私は、地雷を踏んでしまったのかもしれない。
それから居酒屋を出るまで、成宮さんが私の結婚に関して触れてくることはなかった。
あからさまにその話題を避け、不自然な彼。高瀬グループの名前を出した瞬間、顔色が変わったのは明らかだった。
それからホテルへ戻る間も他愛もない会話を交わし、彼は至って普通だった。
でも、やはりさっきのことが引っかかり、私は話題を変え、もう一度聞いてみようと意を決した。
「あの、成宮さんって高瀬グループと.....」
何かあったのかとそう続けようとした時、私の言葉は遮られてしまった。
「明日って、9時だよね?」
「え?あ、はい....。」
そして、そのまま沈黙が流れ、私は口をつぐんだ。その話題は出すなと言わんばかりの圧を感じ、なんとなく話せない空気だった。