愛を孕む~御曹司の迸る激情~
頭の中では、何かあったのかと考えを巡らせ、成宮さんとの会話は頭に入ってこなかった。途中からはもう空返事で、ろくに話も聞かずに歩いた。
「詩音っ。」
ボーッと歩いていると、急に後ろから腕を掴まれ、気づくと私はホテルの部屋の前にいた。ハッと我に返り、声のする方へ振り向くと、部屋を指差しながら立ち止まる成宮さん。
「通り過ぎてる。部屋ここでしょ?」
「あ、そうでした。」
私はポケットからルームキーを取り出し、部屋の番号を確認した。
「なに、酔ってる?」
すると、からかうようにそう言ってきて、咄嗟にへへっと誤魔化すように笑った。
「いや、ちょっと考え事してて。」
「考え事?」
「あー、いいんです。忘れてください。」
そして無理やり話を終わらせると、ドアノブに手をかけた。
「じゃあ、お疲れ様です。おやすみなさい。」
私は会釈をし、部屋に入った。ふぅーっと息をつき、電気のスイッチに手をかけようとした、その時。
後ろからガタッと音がして、突然後ろへ引っ張られた。
驚いていたのも束の間、唇に感じた柔らかい感触。私は、一体何が起こったのか分からなかった。扉は開いたままで、廊下の灯りが私たちを照らし、目の前にいる人物がぼんやりと視界に映った。
だんだんと理解してきたこの状況。でも、気づいた時にはもう遅かった。