愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「じゃー、行こっか!!」

 ひな子がそう言って歩きだそうとすると、私は立ち止まったまま、辺りを見渡した。


「あれ?雪哉(ゆきや)は?」

 もう一人いるはずの私たちの同期、メガネをかけたインテリくん――笠原 雪哉(かさはら ゆきや)。彼の姿が見当たらず、ふとそう言った。


「あー、雪哉ね。今出張で北海道いるんだって!」

「北海道!?営業って大変....。」

 雪哉はこの間も大阪に出張だったとお土産をくれて、今度は北海道。営業は出張が多いらしく、思わず顔が引きつった。


「雪哉が同期会来ないのはいつものことだし、あいつ出張だろうと関係ないっしょ。」

「うん、たしかにっ。」


 彼は同期会とか飲み会の席とか、好むタイプではなくて、あまり参加したがらない。同期会の前に顔だけだすと、駅に着いたら「じゃっ」とあっさり帰ってしまう。

 それでも、必ず顔だけは出しにくるから律儀だなと思うし、本人は恥ずかしがって言わないけど、意外と同期のことを大事に思ってると思う。


 そんな雪哉が、今日は顔も出さないからどうしたのかと思っていたけれど、そういうことだったみたい。

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