愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 すると、隣にそっと座った成宮さん。彼は、どこか少し意味ありげに距離を空け、妙な緊張感が走った。

「今日、助かったよ。ありがとう。」

 私はその空気感にそわそわとしていると、彼の思わぬ言葉を聞き、顔を上げた。

「いえ、私は何も。」

「ううん。個展の話を出してくれなきゃ、思いつかなかったから。成功できたのは蕪木のおかげだよ。」

「そんな!ただ思ったこと言っただけで、こんな風にできるなんて思ってもみませんでした。あれは、成宮さんがいたからできたことです。」

 気まずく思っていたことなんか、すっぽり頭から抜けていた。


 私は必死にそう言いながら、彼の方へと体を向ける。

 すると、呆気にとられたように見つめてきた成宮さんが、突然片手で顔を覆いながら肩を震わせて笑い始めた。

「え?」

 状況がつかめずにポカンとしていると、笑いながら私に向かって片手を上げた。


「いや、あの、ごめん。蕪木らしいなと思って。」

「私、らしい.....?」

「今日一日、俺のこと避けてたろ。そのはずなのに、普通に話し出しちゃうからさ。」

「あ....。」

 私は思わずハッとして唇を噛み、目を泳がせた。そして、そっと向き直り、手持ち無沙汰になると缶を開けてコーヒーを一気に飲んだ。

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