愛を孕む~御曹司の迸る激情~
私たちの関係は、別れたあとも友達や同僚として仲良くできるほど、適当なものじゃなかった。お互いに、結婚を考えるほど真剣だった。
だから、0か100。
そうしなければ、またずるずると過去の自分を引きずってしまう。
心の中でそう決意しながらも、四年間の出来事が頭の中を駆け巡り、涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。
すると、切なそうな表情で目を逸らす彼。頭を抱えてしばらく考え込んだ後、ため息をつくと、意を決したようにまたこちらを向いた。
「分かった。もう、詩音.....、蕪木のことは忘れるよ。」
そして諦めたようににっこりと微笑み、唸りながら体を伸ばした。
「あーあ、馬鹿だったなー。あの時の俺。」
天井を仰ぎながら足を投げ出し、突然そう言って笑う成宮さん。私は無理矢理作ったその笑顔に、心が締め付けられそうになりながら、返答に困り口をつぐんだ。
すると、私の様子を見るなりフッと笑い、勢いよく立ち上がった。
「よし、そろそろ帰るか。」
「え?」
「え?って、新幹線の時間。もうそろそろ行かないと、間に合わなくなるだろ。」
さっきまでの会話が嘘のように、腕時計を見ながら平然とした顔で言う彼。あまりの切り替えの速さに驚いた。