愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 屋上に着き、外に続く扉を勢いよく開けると、ベンチに座る後ろ姿が見えた。私は息を切らしながらつかつかと歩み寄り、彼の前に立つと腰に手を当てて言った。

「なんですか、あれ。」

 私は今、怒っている。

「来んの、はや.....。」

 目の前に平然と座っている、成宮さんに。


 『高瀬祐一はやめとけ。』


 突然、送られてきたメッセージ。訳もわからず、ただただ怒りがこみ上げてきて、いても立ってもいられなくなった。

 ここに来るまで、すれ違った人たちから感じた冷ややかな視線も、この時ばかりはどうでも良かった。


「成宮さんとのこと、噂になってるの知ってますよね?そのことかと思えば、藪から棒になんなんですか?」

 大阪出張の一件で、成宮さんのとのことは全て清算できたはずだった。

 やっと断ち切れたと思っていたのに、こんな噂が広まって....。それだけでも、文句を言いたいところ。なのに、祐一はやめとけ....?


「よくここにいるって分かったな。」

 しかし、彼は涼しい顔で顔色一つ変えず、静かにコーヒーを一口飲む。

「成宮さん、この時間は屋上でコーヒー飲むの日課ですよね?それくらい知ってますけど。」

 私はそう言いながら、ため息をついた。

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