愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「そんなことどうでもいいんです。私がしたいのは、なんでこんなの送ってきたかって話。」

 そして、携帯の画面を彼に向け、眉をひそめた。


 その時、一つの疑問が頭をよぎり、携帯を自分の方へ向けた。

 まじまじと表示されているメッセージを見ながら、改めて思う。祐一の名前を、彼に言ったことがあっただろうか。心の中でそう思いながら、顎にそっと手を添えた。


 すると、突然ベンチから立ち上がった成宮さん。

「婚約者って、高瀬祐一だったんだな。」

 そして私の耳元でそう呟き、横を通り過ぎた。思わず戸惑って振り返ると、彼は柵に背を向けもれかかっていた。


「私、祐一のこと、成宮さんに.....」

「今日出社したら、みんな話してたよ。」

「え?」

「社内中知ってるとか、どんな有名人だよ。」


 私は、その一瞬で全てを悟った。成宮さんとの噂と同時に、きっと以前の噂が再燃したんだ。それに、どんな言われ方がされているのかも、なんとなく察しがついた。


 『高瀬グループの御曹司と婚約中に、営業部エースと浮気している』


 きっと、そんなところだろう。なるべく嫌な言い方で想像してみたら、思わずゾッとした。


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