愛を孕む~御曹司の迸る激情~

「高瀬グループのって言うから、てっきりうちにきてる営業マンか何かだと思ってたのに。まさか本人って....」

 すると、なぜか落胆したように言う成宮さん。その呆れたような言い方に納得いかず、だんだんと腹が立ってきた。

「そんなこと言われても、話そうとしたら最後まで言わせてくれなかったくせに。今更勘違いしてたからって、祐一だからって何が......」

「とにかく、あいつはやめとけ。」

 私の言葉を遮るように、真剣な顔で私を見つめながらそう言ってきた成宮さん。彼のペースにまたのせられ、思わず口籠った。

「なんでそんなこと....」


「あいつの別の顔、まだ知らないんだろ。」


 冷たい風が勢いよく吹き抜け、放心状態の私は髪の毛が宙に舞い上がって乱れるのも気にせず、立ち尽くした。

「別の、顔.....?」

 頭の中が真っ白になり、何も考えられなかった。祐一のことは、信じている。だから、そんなのあるわけないと言い返してやりたかった。


 でも、言えなかった。彼の表情を見たら、言えなくなってしまった。


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