愛を孕む~御曹司の迸る激情~
「あと五分で遅刻。」
すると、成宮さんの声にハッとして、我に返った。
「俺が言うのもなんだけど。気まずいなら、今日は帰っていい。......でも、もし出社するなら、あと5分だぞ。」
そう言って、成宮さんは私の前を通り過ぎ、屋上から出て行った。残された私は、ボーッとしばらく突っ立って、力が抜けるようにベンチに腰掛けた。
「何よ、それ.......」
何がなんだか分からず、もう頭の中はぐちゃぐちゃ。成宮さんとのことは事実以上に誇張して噂され、そんな彼は悪びれもせず、一方的に祐一のことをやめておけと言う。誰のせいで、こんな気まずい思いをしてると思っているのか。
「もう、意味わかんない.....」
いろんな感情が入り乱れ、どうしようもなく泣きたくなった。
屋上で一人。頭を抱えながら、一分だけ。聞こえてくる全ての音から、耳を塞いだ。