愛を孕む~御曹司の迸る激情~

 すると、カウンターの中から一人の男性が出てきた。

「そう言って、飽きもせずに3年も通い続けてくれるのはお前らくらいよ?」

「あ、やっほー!」

 フランクにそう言うひな子にも動じない、farfallaのオーナーシェフ。そして、須崎くんのお兄さんだ。


「すみません、(みなと)さん。」

 慣れたようにどんどん奥へ進んでいくひな子の後を歩きながら、私はペコリと頭を下げた。

「いーのいーの。ひな子から明るさとったら何も残んないからね。」

「うーわ、ひどー。」


 farfallaは、私たちが入社して初めて同期会をした場所。ここは、ホテルで修行していた湊さんが、独立して初めて出したお店だった。

 当時の同期会はもっと人数が多かったけど、みんな都内に詳しくないとなかなかお店が決まらなかった。そんな時に須崎くんが紹介してくれたのが、ここ。それから私たちは気に入って、入社してから3年間通い続けてしまっているというわけ。


「詩音なんて、今日のランチも来てたじゃん。」

「いや、本当ですよ。知ってたら今日のランチ変えたのに。」

「そう言うと思って、黙っててって頼んだの。」

「いや、それは嘘。」

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