愛を孕む~御曹司の迸る激情~
それからとんとん拍子に話は進み、12月の初め頃。両家の顔合わせが執り行われた。
「お母さん、こんなんで大丈夫かしら。」
「お父さんも平気か?」
広々とした高級レストランの個室で、先に席へとついていた私と両親。二人は慣れない空間にやたらとソワソワしながら、私の方を向き、服やら髪やらを触ってそう聞いてくる。
「大丈夫だって。何もおかしくないよ?」
「もうっ、ちゃんと見て?祐一さんのご両親に恥ずかしくないようにしなくちゃ。こういうのは、結婚にも影響するんだからね?」
お母さんはそう言いながら、何度も小さな鏡を見た。
お父さんが仕事を退職したのと同時に、老後は田舎で暮らしたいと、東北の田舎町に移り住んだ二人。しばらく都会に縁がなかったからか、飛行機がついてからも、ずっと落ち着かないでいた。
「どうしよう、お父さん。緊張してきちゃって。」
「母さん、一回落ち着いこう。今日は、詩音の大事な日なんだから。」
ずっとそんな会話を繰り返し、なんだか可愛い二人。私はクスクスと笑いながら、時計を見た。
「もうそろそろかな...」
そう呟き、私もソワソワとし始めた時。
ーーコンコンッ
「高瀬様がいらっしゃいました。」
スタッフの男性に連れられ、祐一たちが到着した。